「高広と袴田は……強いよ。俺なんか袴田の言う通りガリ勉で、運動はそんなに得意じゃない。喧嘩も弱いけど……少しくらい格好の良い所を見せたいだろ」


ポタポタと流れ落ちる鼻血もそのままに、チラリと私の方を見る。


「あんたも頑張ってるねぇ……泣けてくるわ。ほら、美雪は何も感じないの?翔太を見て」


そう言い、翔太を私の方に向かせて尋ねる留美子。


突然そんな事を言われても。


「あのふたりを止めるなんてすごいね。翔太も十分強いと思うよ」


思っている事を言ってみたけど、ガッカリしたように肩を落として留美子がため息を吐く。


「ダメだわ……こりゃ諦めた方が良いかもよ?」


「はは……ま、まあ、もう少し頑張ってみるよ」


私に何を言わせたいのか分からないけれど、翔太が落ち込んでいる事だけは分かった。


もうすぐ玄関のドアが開く。


この「カラダ探し」が始まって、初めて全員が生徒玄関の前に集まった。


高広と袴田、最後まで交わらなかったふたりの心。