『もう帰るから』
その短い一文だけだったけど、帰ってくるならそれで良い。
「もうすぐ帰って来るって。あ、礼儀正しく頭良くないと、お父さん怒るかもしれないよ?」
「うげっ!そんなの私アウトじゃん……礼儀はなんとかなるとしても、頭の悪さはなぁ……」
ベッドの端に腰を下ろし、頭をポリポリとかく留美子。
あまりお父さんと話してないから、「昨日」が変わってどうなのかは分からない。
「まあ、本人を目の前にして、そんな失礼な事はしないと思うけどね」
「うー……なんだか心配だなあ」
私の枕をギュッと抱いて、不安そうな表情を浮かべる留美子。
「カラダ探し」の時よりも怖がっているような気がする。
「いつもの明るい留美子はどこに行ったのよ?怒ってても悲しんでても、騒がしいくらいがちょうど良いんだよ?留美子は」
「何それ?まあいいけどさ。はぁ……なんで緊張してるんだろ、私」
留美子でも緊張するんだ。
こうなると、逆にお父さんに会わせたくなる。