やっぱり聞こえていた。


物音を立てちゃいけないって言ったのに。


遠くから聞こえていた笑い声が、徐々にこっちに近づいてくる。


まずい……これじゃあ出る事ができない。


でも、「赤い人」が袴田の方に行ってくれれば……カラダを棺桶に納める事ができる。


今はそれが最優先。


それに……袴田は私を助けてくれなかったんだから、ここで助ける必要がない。


それこそバカを見るだけだ。











「キャハハハハハハッ!」












笑い声が、廊下の角を曲がって行った。


もう、今しかない!


ペタペタという足音が通り過ぎてから廊下に飛び出した私は、「赤い人」の背中と袴田をちらりと見て、玄関前ホールに走った。


「赤い人」を袴田に任せて、玄関前ホールの棺桶に向かう。


走れば5秒ほどで着ける。


事務室の前の廊下を通り、玄関前ホールに入った私は、その中央に置かれている棺桶に到着して、両手で明日香の頭部を持ち、ポッカリと空いた頭の部分にそっと納めた。


胴と首の切断面が、まるで元から切断なんてされていないように、きれいにつながっていく。


これで後ひとつ……朝起きたら、「昨日」がまた変わっているはず。