西棟にいる「赤い人」は、玄関前ホールに近いからまだ良い。


しがみつかれても、殺されるまでに棺桶に納める事ができるから。


でも袴田は、私が明日香の頭部を持っていると知れば、恐らく邪魔をして来る。


それだけは避けたい。


生産棟から東棟に入り、階段を下りて一階にたどり着いた。


ここからなら、走って行けばふたりのどちらに見つかっても大丈夫。


深呼吸をして、廊下に出ようとした時だった。













ガァン!!












と、何か重い金属を叩くような音が、廊下に響き渡ったのだ。


この音……こんな音がするのは、体育館のドア?


廊下からチラリとのぞくと、奥の方から歩いてくる袴田が、避難口誘導灯の光に照らされてここからでも見える。


高広がどこにいるか知らないはずの袴田が体育館に行ったという事は……結子はやはり袴田とつながっていたという事だ。


だとしたら……今日の結子の余裕はなんなのだろう?


いや、それよりも、ここであれだけ大きな音が聞こえたんだから、きっと西棟にいる「赤い人」にも……。












「キャハハハハハハッ!」