「血が流れた……だから、少しだけ」


そう呟き、生産棟の方を指差す美子。


血が流れた? 私の涙で?たったそれだけで、「赤い人」じゃなくなったって事?


でも……生産棟から工業棟に行こうとしたら「イカセナイ」って言ったのに、今度は生産棟に行けって言うの?


そして、生産棟に向かう渡り廊下の方に歩き始めた美子。


こうして見ていると、普通の女の子のように見えるのに……歩いている姿をみると、やはり幽霊なのだという事が分かる。


私がまばたきをする度、今いた場所から数歩先に現れている。


気づけば、私のすぐ前を歩いていた美子が、家政学室の前まで移動していたのだ。


あの場所は……ショーウインドーの前?


そこは「昨日」、美子が「イカセナイ」と言って私を殺した場所であり、結子が袴田に殺された日、私が逃げて「赤い人」に殺された場所。


この奇妙な一致は……偶然ではないという事を感じずにはいられなかった。


まさかとは思うけど……「昨日」美子が言った「イカセナイ」っていうのは、工業棟にという意味じゃなかったって事?