……なんなんだろ、私は。
何かしら皆に言っていない事があって、それをひとつでも言ってしまうと皆がバラバラになってしまうかもしれない。
「まっかなふくになりたいな~」
あゆみちゃんの事もまだ皆には言わないでおこう。
言ってしまうと、高広が孤立するかもしれないから。
そう考えて、よし、行こう!と、決意した時……「赤い人」が発した言葉に、私は耳を疑った。
「みゆきにおしえた あのばしょを~」
え……さっきのフレーズで歌は終わりじゃないの?
それに、どうして私の事を歌っているの?
「さがしてくれない きてくれない~」
そして、そこまで言って静寂が訪れた。
行こうと思ったのに……足が動かない。
「赤い人」が歌っていた、あの場所とはどこの事だろう。
教えてもらった事なんて、一度もないのに。
「おい、いつまでそうやってるつもりだよテメェ!」
「痛っ!……あ」
考えている最中、私は工業棟の廊下へと袴田に押し出され、その場に倒れ込んでしまったのだ。
瞬間、廊下の中程に背中を向けて立っていた「赤い人」がすばやく振り返り、私を見て笑ったような気がした。