ここにいないなら、いつまでも見ていても仕方ない。


隣にある事務室の前まで進み、ドアノブに手をかけた。


キィィィ……という音を立てて開くドア。


その中をのぞいて見ると……部屋の奥に、かすかに見える黒い人影。


そして……。









廊下側から、事務室のカウンターに伏して、目を閉じて眠っているような留美子の姿があった。


何か……おかしい。


それは私にも分かる違和感。


恐る恐る携帯電話の明かりを奥の人影に向けるとそこには……。


身体中から血を噴き出して、ピクリとも動かない伊勢が、壁にもたれるようにして床に座っていたのだ。


そんな……伊勢まで「赤い人」に殺されたの?


二見の死に方とは違うけれど、こうも簡単に人を殺せるなんて、「赤い人」しか考えられない。


「伊勢は『カラダ探し』の事を……知ってるんじゃないの? なのに……」


なのに、どうしてと言いたかったけれど、逆を言えば、それを知っている伊勢でさえ、殺されてしまうのだ。


その光景を見て、落ち着いた呼吸が再び荒くなる。


足の震えが止まらなくて、立っている事さえできない状態。