私達を見るなり、手に持っていたスコップを床に突き立てる男性。


この屋敷の管理者なのだろうか?


その表情には、怒りの色が見てとれる。


「あ……すみません。すぐに出て行きますから……」


翔太がそう言って立ち上がった時……男性の様子がおかしくなった事に、私は気付いた。


「分かったで……お前ら、美紀と美子をイジメに来たやつらやな!」


改めてスコップを握り直した男性の身体がカタカタと震え始める。









何か……おかしい。


勘違いしているっていうのもあるけど……カタカタと、明らかに不自然な動きの男性の姿は、異様だったから。


「ね、ねぇ……これってなんか……ヤバくない?」


顔を引きつらせて、私の方に後ずさりする留美子。


「ヤバいなんてものじゃねぇよ、お前ら逃げる準備しとけ!」


そう言い、高広が結子を突き飛ばす。


「わしの友達をイジメるやつは許さん!ずっと守ってやるって約束したんや!!」


そう叫んでスコップを振り上げた男性は、正気を失っているように見えた。


「翔太!3人を連れて逃げろ!」


「逃げろって……どこにだよ!?」


高広にすかさず反論する翔太。


確かにこの状況じゃあ逃げる事ができない。