「あー、相島、相島美雪。まだ残ってたのか。ちょうど良かった、少し手伝ってほしい事があるんだが」


背後からかけられた声に、私は踊り場で立ち止まった。


この声は、担任の南田先生?


よりにもよって、振り返ってはならない時に声をかけられるなんて。


どうするべきか……私は悩んだ。


「手伝うって……な、何をですか?」


背中を向けたままで話すのは失礼かなと思いながらも、振り向けない状態に置かれている私にとっては、これが精一杯。


「赤い人」なんて、誰かが作った噂話。


そう思っていたけど、実際に「赤い人」を見てしまったから。


「いやなに、たいした事じゃないんだが。大職員室に来てくれないか?」


階段を下りて来て、ポンッと私の肩に手を置く南田先生。


でも……何かがおかしい。


先生の口ぐせは「17時までが勤務時間」で、それ以降は授業で分からなかった所を聞きに行っても教えてくれない。


それなのに、生徒に何かを手伝わせようとするなんて。


「せ、先生、ごめんなさい。私はもう帰ります」


そう言い、肩に置かれた南田先生の手に触れた時……私は気付いてしまった。