「ごめんねぇ。遅刻してぇ、メイクする時間がなかったからぁ、ついでにしてたら遅くなっちゃったぁ」


何を言われていたかも知らない様子で、ニコニコしながら私達にそう言った結子は、本当に化粧をしている。


すっぴんでも可愛いと思うのに……化粧をした事がない私には、それにどれくらい時間がかかるか分からないから、何とも言えなかった。









一限目が終わり、私達は半ば強引に例の廃墟へと連れてこられた。


翔太以外は、暗くてどこを通ったのか分からないと言っていたけど、その翔太が道順を覚えていたから困る。


本当は、来たくなかったのに。


「相変わらず荒れ放題だな。やっぱり『昨日』踏み締めた草が、元に戻ってる」


そう言いながら、草をかき分けて門を目指して進む翔太。


「ったくよ……いくら『昨日』に戻るからって、これくらいサービスしてくれてもいいだろ」


高広もブツブツと呟き、翔太と一緒に草をかき分ける。


「ねぇ、本当に行くの?やめようよ、絶対に何か起こるって!」


「何か起こってくれねぇと、何もつかめねぇだろうが。ここまで来て引き返すつもりか?」