高広の言う通り、あれで何が分かったというわけじゃない。


何ひとつとして解決した事はないのだ。


「あ、私ちょっとトイレに行ってくるねぇ」


高広と翔太が話し始めたこのタイミングでトイレか。


「トイレなら、私が荷物持っててあげるよ。邪魔になるでしょ?」


「え?ああ、い、いいよ。これくらい邪魔にもならないし」


笑顔で手を差し出した私に、あせったように手を振る結子。


いつもの口調じゃなくなってるよ。


「そう?ならいいんだけど」


校舎の中に入って行く結子の後ろ姿に、疑惑はますます深まる。


「それで、どこに買い物に行くの?美雪の妹ってどんな子だろ」


きっと、どこかで袴田にメールか電話をすると考えるべきかな。


でも、それが翔太の仕かけた罠。


結子が袴田になんと言おうと、私達の本当の行き先は分からないはず。


今分からなくても、今夜袴田がどう動くかで、結子が白か黒かはっきりする。


「ちょっと、美雪?聞いてる?おーい!」


目の前で留美子の手が振られて、私はハッと我に返った。


「え?あ……何?」


「だからぁ、どこに買い物に行くのかって聞いてんの!」


まったく聞いてなかった……。