「キャハハハハハハッ!」
子供が笑っているような声の主が、ドアを開けて入って来たのだ。
その無邪気な笑い声に、言い様のない恐怖を感じ、思わず声を上げそうになった時。
「いやああああああっ!」
私の代わりに、二見が叫んだその次の瞬間だった。
「ねぇ……赤いのちょうだい」
そんな声が聞こえた。
「や、やめて……やめてぇぇぇぇぇっ!! あぎっ!!」
まるで、小動物が踏み潰されたような声が聞こえて、ビチャッという、液体が何かにかかったような音も聞こえた。
と、同時に天井から聞こえた衝突音。
そして……洋式便器のふたの上に落ちて来た何かに、私は声も出せない程の恐怖で感情を支配された。
ふたに弾かれ、私の膝の上に乗ったのは……二見の頭部。
まだフラフラと動いていた目が、私の目を見つめて。
そして動かなくなった。
「!!!!!!!」
あまりの恐怖に、二見の頭部を床に落として、ガタガタと震え始める。
ゴトッと、床に落ちる音がしたけれど、このドアの向こうにいる何者か……恐らく「赤い人」は、無邪気な笑い声を上げていて、気付いていない。
バキバキ、グチャグチャという、今までに聞いた事のない奇妙な音は、私の気を狂わせてしまいそう。
しばらくその音が続いた後、突然音は止まり、代わりに妙な唄が歌われ始めたのだ。