生徒玄関の前で持っていた携帯電話は、今は持たれていない。


「おぅ。遅かったじゃねぇか、寝坊か?」


ハッと鼻で笑い、結子に尋ねる高広。


「いつもと同じ時間に起きたんだけどぉ、二度寝しちゃったんだぁ」


昨日は袴田に部屋まで来られるからって、早く学校に来ていたのに……今日はずいぶん余裕があるように見える。


「お前、『昨日』西棟の三階にいなかっただろ?どこにいたんだ?」


「あぁ……ここだよぉ。屋上を調べてたのぉ。高広が三階を調べるならぁ、私は違う所を調べた方がいいかなと思ってぇ」


予想外の答えだった。


確かに西棟の三階なら、屋上に出る事もできるし、その可能性も確かにある。


でも、何も言わずに屋上に行くのはやっぱり不自然かな?


一度合流しないと結子がどこまで調べたのか分からないし、本当に屋上を調べたのかも疑わしい。


「まあ、それならいいんだけどよ……今日はどこを調べるんだ?」


「メンバーは昨日と同じだ。高広達は体育館を調べてくれ、俺達は生産棟を調べる。もちろん、校内放送が流れた後でな」


高広の問いに、翔太が答えた。


その言葉に、首を傾げる留美子。