「お願い! 二階の方に行って!!」
鍵をかけて、私はドアを背に、その場に小さくかがんで祈るように呟いた。
廊下から聞こえる悲鳴はどんどんこちらの方に向かっている。
そして、勢い良くバンッ! とドアが開けられ、二見と思われる人物が、息も荒くトイレに飛び込んできたのだ。
どうして……どうしてこんな追い詰められるような場所に逃げるのよ!
いったい何を考えているのかが分からない。
「ハァ……ハァ……」
息を切らしながら、二見がトイレの奥へと走って来る。
お願いだから……出て行ってよ!!
真っ暗な個室の中で、目を閉じて必死に祈った。
でも……。
「な、なんでぇ!? 誰かいるのぉっ!? 開けて、開けてぇぇ!!」
私の入っている個室のドアを、ドンドンと何度も叩く二見。
背中に伝わる衝撃とその悲鳴が、私の恐怖心をさらにあおる。
「あぁ……ま、窓も開かない……た、助けてぇっ!!」
個室のドアが開かないと分かって、窓を開けようとしたのだろう。
二見が泣き叫んでいたその時だった。