「あしをちぎって……」
歌が……そこで止まった。
苦しまぎれの呟きが、「赤い人」に届いたのかな?
それでも、私の身体にしがみつく力が弱まったわけじゃない。
考えるのは後で良いから、今の内に行ける所まで行かなきゃ……。
「そうだよ美子……美紀の言いなりにならないで。美子は……お姉ちゃんでしょ」
こんな状況なんだから、言える事は何でも言ってしまおう。
何も言わなくても、殺されてしまうのだから。
そう呟きながら、家政学室のショーウインドーに差しかかった時だった。
「イカセナイ……」
「えっ!?」
初めて「赤い人」の……美子の言葉を聞いた気がする。
笑い声や歌声、うなり声じゃない。
美子本人の物と言っても良いその言葉に、私は驚いた。
と、同時に、恐ろしい力で腹部を締め上げる美子の腕。
「ああああああっ!!」
突然のでき事に抗う術などなく、筋肉や内臓が潰される痛みと恐怖が私を襲う。
そして……ボキッと背中から骨が砕けるような音が聞こえて、私の上半身は床に落ちた。
私の言葉は……美子を怒らせたのかな。
どういう事かが分からないまま、薄れ行く意識の中、美子の言葉の意味を考えていた。