「どうしてどうしてあかくする~」
「美子……美紀を殺したのはあなたでしょ? どうして美紀の言いなりになってるの……」
どうせこのままだと死んでしまうんだ。
あの廃墟で見た幻では、美紀を殺して、美子は「赤い人」になったような印象を私は受けた。
「どうしてどうしてあかくなる~」
なんてきいても、答えてくれるはずがないよね。
私、何やってんだろ。
幻を見てから「赤い人」に対する恐怖はあるものの……「小野山美子」に対しては、かわいそうという想いの方が強い。
まあ、どちらも同じなんだけど。
「お手てをちぎってあかくする~」
なんとか生産棟に入り、壁伝いに歩き続けるけど、工業棟まではまだまだ距離がある……。
走れば一分もかからないっていうのに。
「からだをちぎってあかくなる~」
階段に差しかかり、そこを通り過ぎて右に曲がる。
後はここをまっすぐ行けば工業棟だけど……とてもそこまで行ける気がしない。
「美子……あなたは美紗ちゃんを、美紀から守ったんだよね……この美紗ちゃんを」
諦めそうになった私は、あの幻の事を思い出して……身体の前に回されたぬいぐるみに触れ、そう呟いた。