「あ~かい ふ~くをくださいな~」
ついに歌が歌われ始めてしまった。
このまま「赤い人」が歌を歌い終われば……私は殺される。
「し~ろい ふ~くもあかくする~」
私の力では、しがみつかれたら引きはがせない事は分かった。
だったら、こんな所で殺されちゃダメだ。
どこまで行けるか分からないけれど、皆のためにできるだけここから離れないと……。
「まっかにまっかにそめあげて~」
なんとか身体を起こし、ドアを支えに立ち上がった私は、「赤い人」を引きずりながら購買部室を出た。
皆から離れていて、誰も行かない場所まで行かなければ……。
「お顔もお手てもまっかっか~」
工業棟だ。
でも……ここまで歌を歌われていて、そこにたどり着けるか不安だった。
「髪の毛も足もまっかっか~」
ヨタヨタと「赤い人」を引きずりながら、生産棟の方に向かう私。
でもまだ、渡り廊下の真ん中辺りを歩いている。
こんな調子じゃあ、工業棟になんてたどり着けない。