「キャハハハハハハッ!」















その笑い声で我に返った私は、どう考えても助かるはずのないこの状況に絶望するしかなかった。


「赤い人」がジリジリと迫り、私の身体に手を回す。


「は、放して!!」


ピタリとくっつく「赤い人」を引きはがそうと、その腕をつかもうとするけど……血でヌルヌルと滑ってしまう。


そう言えば、正面から抱きつかれたらどうなるの?


背中にしがみついて、歌を歌い終わったら殺されるけど……。


壁に背中を付けている私には、「赤い人」が入り込む隙間はない。


もしかして……このまま耐えれば、殺されずに「赤い人」を引き付ける事ができるかもしれない。











……なんて、都合の良い話がある訳がなかった。


ぬいぐるみを持つ手が、私の背中に回らないのに苛立ったのか、もう片方の手で制服をつかみ、私の身体を揺さぶり始めたのだ。


その行為は徐々に激しくなり、ついに私は「赤い人」に覆いかぶさるように、床に倒れ込んだ。


でも……私の下敷きになったかと思われた「赤い人」はそこにいなくて、床に身体を打ち付けた私の背後に、すばやく回り込んでいたのだ。