歌を歌っていない……つまり、私達を追いかけるのを諦めたわけじゃないって事?


笑い声でもなく、歌声でもない不気味ないうなり声。


これは何を意味しているのだろう……。


そう考えていた時だった。












ゴンッ。



ゴンッゴンッ。











壁に持たれていた私の背中に、その音と振動が伝わって来る。


いったい……「赤い人」は何をしてるの?


何かを壁に打ち付けている事は分かるけど……。


そして、しばらくその音は続き、私は部屋から身動きが取れずにいた。


背中に伝わる振動がなくなり、その意味が分からない行動が終わったのだと理解した私は、ゆっくりと顔を上げた。


カウンターのガラス越しに見える廊下は、緑の光で照らされていて……そこには「赤い人」の姿はない。


良かった……私が見つかったというわけじゃなかったんだ。


フウッと、音を立てないように私は安堵の息を吐いた。


それにしても、あの音の後「赤い人」はどこに行ったのだろう?


歌も聞こえないし、校内放送が流れたわけでもない。