「キャハハハハハハッ!」














その声が廊下に響いたのは、私が部屋に入って数秒経ってから。


鼻息でさえ聞き取られてしまいそうなこの距離。


壁一枚隔てて、ほんの数メートルしか離れていない場所で、私は早くなりそうになる呼吸を抑え、ゆっくりと口で息を吸った。











「アアアアア……」














どこに行ったのか、私達が何人いたのかも恐らくは分かっていないはず。


だから、「赤い人」も迷っているのだろう。


ペタペタと、何度も階段の前を行ったり来たりしているようで、その足音の方向が定まっていない。


こうなると、西棟の方に逃げた留美子が正しかったんじゃないかさえと思えてくる。


一番近くの部屋に逃げ込んだのは、間違いだったかな……。












ペタ……。





ペタ……。














行く方向を決めたのか、「赤い人」が動き始めた。













ペタ……。





ペタ……。












その足音は、大職員室の方に……西棟の方に向かっている?


いや、この部屋のカウンターの方に来てる!?


「赤い人」を見ていないから、詳しい事は分からないけど……そんな気がする。










「アアアアア……」