そこまで歌った時、足音が突然「カコン」という音に変わった。


この音は……下足箱の前に置かれている簀子?


つまり「赤い人」は、廊下からドアの方に向きを変えた。


このままだと、ふたりとも見つかってしまう。













「お顔もお手てもまっかっか~」












とは言え、こんな所で声を出したら絶対に気づかれる。


私は、背後にいる留美子をひじで軽く小突き、肩越しに東棟の方を指差した。


足音を立てないように、ゆっくりと向きを変え、「赤い人」に気付かれないように歩こうとしたその時だった。












ガコンッ!


留美子の靴が簀子に当たり、派手に音を立ててしまったのだ。


「ごめん美雪!」


「いいから逃げて!!」


謝る留美子の背中を押し、その手を取って私は駆け出した。













「キャハハハハハハッ!」












何個か向こうの下足箱から聞こえる笑い声に、背筋が凍り付くような恐怖を感じる。


逃げるなら、東棟以外の選択肢はない。


玄関から飛び出した私達は、「赤い人」から逃げるために東棟に入り、近くにある階段を駆け上がった。