「じゃあ、気を付けろよ。『赤い人』を見たら、絶対に振り返るんじゃねぇぞ」


先程言った部屋を調べて、それだけ言って伊勢は事務室に、留美子は会議室へと向かう。


私がトイレを調べる事になり、ふたりの背中を見送ってから、体育館の方に歩いて行った。


東棟一階のトイレは体育館に近い、階段のすぐ南側にある。


「嫌だなあ……トイレなんて……」


いくら携帯電話の明かりがあるとはいえ、何か頼りない淡い光。


そして……分かれて探した方が効率が良いとはいえ、夜の学校でもひとりになってしまった。


トボトボとその前まで歩いた私は、まずは男子トイレを選択する。


どちらに入っても良かったけれど、こちらの方が体育館側にあるから、できれば奥から手前に向かって調べていきたい。


うちの学校のトイレでは、ここだけドアが付いている。


たぶん、職員玄関や体育館が近くにあるから、臭い対策だろうと思うけど、そんな事は今はどうでもいい。


私は、そのドアを押して男子トイレの中に入った。


入ってすぐの鏡に映る、自分の姿にビクッと身体が反応しながらも、その奥へと歩を進めた。


掃除用具入れ、和式、洋式と、隅々まで調べたけれど、男子トイレにそれらしいものはなかった。


まあ、そんなに簡単に見つかるなんて思ってはいないけど、それよりも夜の学校というシチュエーションが怖くてたまらない。