でも、高広は明日香が好きだから、私はどうこうするつもりはない。


私なんかに、何もできるはずがないから。


「そういう人はいないかな……恋愛なんて、した事ないし」


これは……嘘をついた事になるのかな。


もしも、高広に対する気持ちが、人を好きになるって事なら……嘘をついている。


「もったいなぁい。恋愛しなきゃぁ、人生損だよぉ?私だけがそう思ってるのかもしれないけどぉ」


そんな話をふたりでしながら、階段を上って三階に到着した。


西棟の三階は手付かずのはず。


南側の階段からなら、追い詰められないうちに南端の教室や、トイレから調べた方が良い。


「じゃあ、私は左から調べるから、結子は右に行く?」


そう尋ねても、考えずに即答するのが結子のすごいところだ。


「一緒に行こうよぉ。武司が来たらぁ、私が真っ先に殺されちゃうよぉ」


まあ、私達ふたりで高広ひとりと同じ速度だというのなら、それもありかもしれない。


結子を監視するという意味でも。