今夜最初の校内放送が流れたのだ。


やっぱり生産棟……。


そこに「赤い人」が現れる確率が高い。


少し不思議に思いながらも、生産棟の二階なら少しは大丈夫だろうと思っていた。


「生産棟のぉ、二階にいるなら大丈夫だよねぇ」


校内放送を聞いて、結子が安心したような声を出した。


次の校内放送が流れるまではしばらく時間が稼げる。


この間にできれば西棟の残りの部屋を調べたいから、それなら分かれた方が早いんだけど……。


結子への疑いが完全に晴れたわけじゃないから、ひとりになる時間を作るのは避けた方が良いかもしれない。


「まて、声がする……武司だ」


部屋を出ようとした私達に右手を向けて、高広が呟いた。


「……かよ。生産棟の二階まで……」


その声は確かに袴田だったけれど、徐々に遠ざかっていった事で、大丈夫だと判断したのだろう。


私達に向けていた手を下ろして、安堵の吐息を漏らす高広。


「東棟の方に行ったみたいだな……隣の部屋に行くか」


ゆっくりとドアを開け、大丈夫だと分かっていても周囲を確認する。


一連の動作が、もう癖になっているのだろう。