もしも、何も分からなければ、またここに来なければならないかもしれないから。


「あれだけで何が分かるんだよ。美紀が『お姉ちゃん』って呼んでほしかった事と、美子がぬいぐるみを妹だって思ってた事くらいしか分からないぞ」


と、翔太が留美子に反論した時、その音は聞こえた。












ギシ……。





ギシ……。














廊下から聞こえる、床がきしむ音。


時間的にも、もしかすると次が最後になるかもしれない。


「おい……また美子の部屋だぜ。見せるなら一度に見せろよな……」


廊下に出た高広の後に続き、皆廊下に出て、美子の部屋へと向かった。


これで最後の幻になるのか……美子の部屋に入った私の目に飛び込んできたのは、あまりにも異様な光景だった。


そこにいたのは……全身真っ赤、赤い服を着て、うさぎのぬいぐるみを持って窓際に立っている少女。


私達が知っている「赤い人」がそこにはいたのだ。


その姿を見て、私の心臓がドクンと音を立てたのが分かる。













「美子ちゃん……やっぱり、お姉ちゃんがいないとダメなんでしょ? フフ……分かってるよ。ずっとお姉ちゃんの近くにいるもんね」












……違う、これは「赤い人」じゃない。