「今のところ、まだ『呪い』を解く方法は分からないみたいだね」


「そうですね。でも、まだ美子は俺達に何かを見せたいみたいです。また音が聞こえる」


私達の中で、一番廊下側にいた翔太がそう言って部屋を出た。


「次は隣の部屋だ。そこに入っていった」


私が廊下に出た時には、すでに美子の姿はなかったけれど、部屋に入ったところを翔太が見ていた。


「なんかぁ、かわいそうだよねぇ。てか、不幸が重なったって事だよねぇ」


いつもより声のトーンが低いけれど、それでも結子が言うと軽く聞こえるのはなぜだろう。


やっぱり口調が原因なのかな?


「不幸が重なった結果がこの廃墟か……母親が言ってた美紀の死も気になるところだな」


隣の部屋に移動する間に、結子と翔太の短い会話。


美子が入ったという部屋のドアの前に立ち、高広がドアノブに手をかけた。


恐らく幻が見える……もう、そう思っているのだろう。


何も言わずに開けたドアの隙間から、漏れた光が私を照らす。


その部屋は、美子の部屋と同じ家具があり、その配置も良く似ている。