思わず目を細めて、部屋にゆっくりと足を踏み入れる。


今度はどんな幻を見せられるのだろうか。


眩しさに慣れ、目を開いて行くと……そこは子供部屋。


美紀の部屋か、美子の部屋かは分からないけど、ベッドの上に、ちょこんと座る少女の姿が目に入った。


「美子ちゃんね、お姉ちゃんになれなくなったの……赤ちゃんが死んじゃったんだって」


誰か他にいるのかな?


部屋の中を見回しても、ひとりしかしないようだけど。


「だからね、あなたが今日から私の妹の美紗ちゃん。美紀ちゃんみたいに意地悪しないからね。美紗ちゃんは、美子ちゃんとずっといっしょだからね」


この少女は美子だ。


そして、話しかけていたのは人じゃない……。


「お姉ちゃんの言う事は、ちゃんと聞くんだよ、美紗ちゃん」


そう言って、うさぎのぬいぐるみを掲げた美子。


だから……「赤い人」になっても、美子はぬいぐるみを持っていたのか。


ぬいぐるみは、美子にとっては物ではなく、妹だったのだから。












そこで幻は終わり、私達は部屋の中で立ち尽くしていた。