「じゃあ、美紀ちゃんの死はどう説明するの!?ダメだわ……やっぱり呪われてるのよ……ほら、入り口から誰かが私を見てる!!」


そう叫んで、私を指差す母親。


その表情は、まるで八代先生を女性にしたような不気味なもので、幻だと分かっていても恐怖してしまう。


「あれは和子さんじゃないか!しっかりしろ!!」


父親が、母親の頬を叩いた瞬間、幻がフッと消えて、真っ暗な廃墟に戻った。


さっきまでの、日常生活の幻なんかじゃない……何かが起こった後の、最後の晩餐。


この直後、ふたりはこの屋敷を出たのだろう。


子供を皆失った母親の気持ちは、まだ私には分からないけど……悲しいなんて言葉では言い表せないほど辛いのだろうという事は、母親の姿を見ていて分かった。














ギシ……。





ギシ……。












私達が話をする間もなく、美子が歩く音が背後から聞こえる。


次はどこだと、高広が懐中電灯で照らすと、階段を上っている美子の姿が見えた。


「次は上みたいだな。しかし、どうして家具がそのままで廃墟になったのか……分かったな」


今の幻が、ここでの小野山家の最後。


翔太もそう思ったのだろう。