「る、留美子……伊勢君が言ってる事は、たぶん本当だよ……私、『赤い人』から、伊勢君に助けてもらったから」


まだ眠そうで、あまり考えていなさそうな留美子の制服の袖をつかみ、私はそう呟いた。


「私? んー……私も帰りたいけど、なんか入らなきゃならない気がするんだよね。なんでだろ?」


留美子が不思議そうに首を傾げた時……。


玄関のドアが、ゆっくりと開かれたのだ。


「テメェらだけで遊んでろ、俺を巻き込むんじゃねぇ!」


意見が完全に分かれて、私達は校舎の中へ、袴田達は校門へと向かった。


「留美子が来るとは思わなかったぜ。お前、前回は帰ろうとしてたからな」


少しうれしそうに笑みを浮かべながら、伊勢が留美子を見る。


「前回って何よ? こんなの初めてだっての。私は美雪に頼まれたからあんたに付いてるだけだからね。それに……武司も結子も嫌いなんだよね」


私に頼まれたから……。


その言葉が嘘でも、私はうれしかった。


「俺と翔太、留美子は、前にも『カラダ探し』をやってんだよ。明日香も、理恵も健司も一緒にな」


冷たく、刺すような空気が張り詰めた生徒玄関で、伊勢が言った言葉に留美子は驚きを隠せないようで。


「そ、そんなわけないでしょ! じゃあ、何であんただけ覚えてて私は覚えてないのよ、おかしいじゃん!」


そう話しながら土足で廊下に入り、東棟の方に向かう伊勢。