「え!?なんで押されてるの!?」


私がそう言った時、正面にある見えない何かに当たった。


いや、この感触は……人?


そうだ、幻を見ているのは私だけじゃない。


きっと、押しているのも前にいるのも、4人のうち誰かなのだろう。


そう考えると、少し安心できる。










「バカバカ!! 開けてよ美紀ちゃん!!」












突然聞こえたその声に、私はドアの方を振り返って見た。


そこにいたのは、さっきとは違う服を着た少女が、ぬいぐるみを脇に抱えてドアを叩いていたのだ。


「美紀ちゃんじゃないでしょ!お姉ちゃんって呼ばなきゃ開けてあげない!」


「美紀ちゃんは美紀ちゃんだもん!お姉ちゃんじゃないもん!」


まるでひとりで会話をしているかのように、ドアを挟んで同じ声が聞こえている。


美紀と美子……喧嘩をしているのだろうか?


「じゃあ開けない!美子ちゃんは美紀ちゃんの妹なんだから、お姉ちゃんって呼ばないなら、ずっと開けないんだからね!」


「美紀ちゃんのバカ!美紀ちゃんなんて嫌い!!」


泣き叫ぶ美子のそんな姿を見て、私は妙な違和感を覚えた。