「本当にここに入ったのかい? 美子の幽霊は」


結局、八代先生を先頭に、美子が入ったドアの前までやって来た私達。


確かにここに美子が入った事は、八代先生以外の皆が見ているから間違いない。


この中に美子がいるのだ。


「ああ……この部屋の中にいるな。皆、良いか?開けるぜ」


そう言った高広が、皆の返事を待つより早くドアを開けた。


部屋の中に押すドアではなく、廊下側に引くドア。


それが開き、中を確認すると……真っ暗で、いろんな物が置かれている倉庫のような細長い部屋。


美子が入ったから、また幻でも見るか、襲ってくるかと思ったのに……。


などと考えていたら、その場にいるはずの皆がいなくなって、私だけがそこに立っている事に気付いた。


暗くて良く分からない室内……それは、今も昔も同じだという事なのだろう。


私はすでに、幻に包まれていたのだ。


先程とは違い、真っ暗な空間での幻……。


次は、私達に何を見せようとしているのだろう。


ゆっくりと部屋に入った私は、誰かに押される感覚を背中に感じ、部屋の奥へと歩かされた。