血まみれじゃないから、受ける印象がずいぶん違うけれど、ぬいぐるみに白い服。


生前……それも、殺害される直前の姿なのかな。


「来いって……事か?」


廊下に出ている高広がそう呟き、私達に「来い」と手招きをする。


これは、美子が何かを伝えたいのか、それとも罠なのか。


さっきの幻を見る限りでは、危険な感じはなかったけど……。


「ここまで来たんだ……行くしかないだろ」


そう言いながらも、足が前に出ない様子の翔太。


いや、翔太だけじゃなく、誰も動こうとしていない。


それはそうだろう。


何も起こらない事を願って入ったこの廃墟で、その何かが起こってしまったのだから。


「キミ達、何を見ているんだ?さっきから動かないけど。向こうが気になるなら、あっちからにしようか?」


「先生、あの女の子が見えなかったの!?あれ、絶対美子だよ!?」


やっぱり、八代先生には見えていないんだ。


留美子の言葉も良く分かっていない様子で、首を傾げている。


「先生、案内役でしょぉ?先に行ってよぉ」


結子に背中を押された八代先生が、よろめきながら廊下に出た。