さすがの高広も、廃墟というシチュエーションと、今起こった幻のせいで、留美子の言葉にあせりを見せている。


しかし、「チッ」と舌打ちし、八代先生の手から懐中電灯を奪い取ると、意を決したように廊下に飛び出した。


まだギシギシという音は聞こえている……。


高広が廊下に飛び出して、今の足が気になるのだろう。


皆、恐る恐る入り口に歩み寄り、廊下をのぞくように顔を出して様子をうかがった。


「ん?何かあったのかい?」


皆のその様子を見て、ようやく異常に気付いた八代先生。


私達と同じように廊下を見るけれど、音すら聞こえていないようで。


だとすると、私達が見ているモノは見えていないはず。


今は玄関付近を歩いている、白い服を着た少女の後ろ姿を。


まるで、「次はこっち」と教えてくれているかのように歩き続ける少女。


その脇には、大きなうさぎのぬいぐるみが抱えられていた。


玄関を通り過ぎ、最初の部屋のドアを開けて、中に入って行った少女。














あれは……美子?