「……さ、さあ。行こうか」


「騒ぐなっつった先生が何やってんだよ……」


まさか、こんな事になるなんて思わなかったのだろう。


八代先生はバツが悪そうに、そそくさと敷地内に足を踏み入れた。


八代先生に続き、倒れた門を踏み付けて敷地内に入る高広と翔太。


「あ、あんた達怖くないの?どんな神経してんのよ……」


そう言いながら、私の背中を押して敷地内に入る留美子。


「ま、死ぬより悪い事は起こらないだろ。それに、死んでも俺達は死ねないからな」


八代先生が懐中電灯で照らし出した屋敷や庭を見ながら翔太が呟く。


「お前、幽霊なんて信じてるんじゃねぇだろうな?ガキかよ。いるわけねぇだろ、そんなもん」


「高広、『赤い人』はきっと幽霊だよ……」


高広の間違いに、思わず呟いてしまった。


「ああっ!ほ、ほら、何か動いたよあそこ!」


留美子が、半ばパニック状態で懐中電灯を向けた先には、崩れたブランコの支柱にくくり付けられたロープがあり、それが風で揺れているだけ。


「留美子、ただのロープだよ。早く行こう」


私だって怖くないわけじゃない。