「まあ、保健室で毎日あんな事をされたら、近寄ろうと思わないからな。確かに、二見が袴田から離れなかったら、ずっと保健室にあっただろうな……」


そこに、「赤い人」や翔太が駆け込んだから、袴田が怒って、私達の邪魔をし始めたってわけだ。


「武司はぁ、そのつもりだったみたいだけどぉ、毎回私が先に殺されるんだもん。嫌になるよぉ」


その口調のせいか、緊迫感が伝わらないけれど、自分の彼氏に身代わりにされたら、それは嫌になるだろう。


翔太の席で、そんな話をしていた時だった。


「昨日」と同じ時間、伊勢とふたりで教室に入って来た留美子と、私の目が合ったのだ。


翔太の席は一番廊下側、二見は教室に入って来た留美子達を背にしているから、まだ気付いていない。


でも、留美子の方は二見の後ろ姿に気付いたのだろう。


一瞬、パアッとうれしそうな表情を浮かべた後、「昨日」の事を思い出したのか、バツが悪そうな表情に変わる。


どこを見て良いか分からないと言った様子で、頭をかきながら留美子は近付いて来た。


「えー、あー、あのぉ結子……昨日はその……ごめんね。話も聞かずにぶっちゃって……」