そして、私が廊下に出れば、きっと二見は私の方に来ると思う。


私の運の悪さは、それほどのものだと思った方が良い。


それに、怪我をしているから、犠牲になるのなら翔太よりも私だ。


そんな事を言えば翔太は止めるだろうから、何も言わない。


訪れた僅かな沈黙。


そして、開かれた隣の職員室のドアの音で、私はその時が訪れた事を理解した。


「二見が入って来たら、廊下に出るんだ。俺が合図をしたら行けよ」


翔太のその言葉に私はうなずく。












コツ……。












職員室の中に足音が響いた瞬間、翔太がドアを指差した。


「行け」という合図なのだろう。


私は廊下に出るドアを開けて、教室から飛び出した。


どちらに行くか……なんて、考える必要がない。


「赤い人」がいるかもしれないけど、南側に逃げるしか選択肢がないのだ。


教室から飛び出して、南側に向かって走る。


袴田と「赤い人」が、いつどこから飛び出して来るかという恐怖に耐えながら。


でも、その姿も声も聞こえない。


となると、工業棟の一階にでも行ったのだろうか?