コツ……。
コツ……。
徐々に近付いてくるその足音に、私の不安は大きくなる。
袴田、「赤い人」、二見と、見つかってはいけない相手が三人もいるなんて。
「美雪、向こうの教室から出るんだ。かなり足音が近付いてる」
そうささやき、指差したのは南側の教室。
恐らく職員室の前を二見が歩いているのだろう。
急いで職員室の南側の部屋へと駆け込んだ私の背後で翔太がドアを閉めて、そこに耳を当てる。
「これじゃあ、カラダを探すどころじゃないぞ……美雪、二見がもしも職員室に入ったら、俺が引き付けておくから工業棟から逃げろ」
「入って来なかったら、一緒に調べるんだね……」
できる事なら、この工業棟を調べ終わらせたいのに……。
コツコツと聞こえる二見の足音が、どこに行こうとしているのか。
それ次第で私の次の行動が決まると思うと、少しばかりの息苦しさを感じた。
コツッ。
二見の足音が止まった。
どこで動きを止めたのかは分からないけれど、職員室のドアが開けば私はここから逃げ出す。
その準備はできている。