その言葉と共に、歌が聞こえなくなった。


「まずいぞ、『赤い人』を振りほどいたんだ」


「袴田が部屋を出る、どこでも良いから入らなきゃ」


互いに顔を寄せ合い、背後にいる袴田に聞こえないようにささやく。


今いる場所から一番近い部屋。


それが何の部屋かも分からずに、私達はそこのドアを開けた。


慌てて飛び込んだ教室、ドアの前で廊下の音を聞くのは翔太。


もう少し袴田が教室から出るのが遅ければ、生産棟の方に逃げられたのに。


そんな事を考えながら、私はナイフと携帯電話を入れ換えて、室内を照らしていた。


ここは、工業科の……職員室?


良く見てみると、この部屋を中心に北側と南側の教室は、廊下を通らなくても行き来する事ができるのだ。


「翔太、この部屋……隣の部屋とつながってる」


これなら、「赤い人」や死体に見つからずに移動ができる。


「それは良かった……こっちは良い知らせと悪い知らせのふたつがある……良い知らせは、袴田が向こうに行った事」


私達にとっては良い事かもしれないけど……もしもそのまま工業棟の一階に向かえば、伊勢達にとってはピンチになる。