「ただいまー」
誰からの返事もない家に帰り、そそくさと自分の部屋に戻る。
昨日は、お風呂から上がってすぐに、携帯電話を眺めて眠ったから、お弁当を作るのを忘れた。
だから、今日はお弁当箱を洗わずに済んだ。
「留美子……初めて名前で呼べる友達ができたよ」
家の中で唯一安らげる場所で、私は携帯電話の画面を見つめる。
新しく追加された『柊留美子』の文字に、昨日と同じようなうれしさを覚えて。
制服から部屋着に着替えてすぐに、ベッドに横になった。
そういえば……留美子の番号を教えてもらった事がうれしくて、伊勢にメールを送ったのを忘れていた。
良く画面を見てみれば、メールのアイコンがある。
返信……してくれたんだ。
これが普通なんだろうけど、私にはそれがうれしかった。
ドキドキしながら、伊勢から返ってきたメールを確認すると……。
『0時に「カラダ探し」は始まるから、それまでに寝ておけ。明日の準備はしなくていいぞ』
と、相変わらず無愛想な返信。
0時からというのは分かったけど……明日の準備をしなくてもいいってどういう事?
でもまあ、友達の言う事だから、仮眠は取っておこう。
『明日の準備がいらないって、どういう事ですか?』
そんなメールを送って、私は布団をかぶり、眠る事にした。
良い事ばかりの今日が、この後一転して恐怖に変わる事を、私はまだ知らなかった。