袴田の右側……私の視界には入っていない位置に「赤い人」がいるのだろう。


つまり、入り口にいるのは二見……。


このチャンスを逃してはならない。


私は迷わず翔太の手を取った。







「結子!?テメェは俺が殺したはずだろ!?なんで生きてやがる!!」








入り口には二見、右側には「赤い人」。


袴田がパニックを起こしているこの間に、二見がいない方のドアへと身を低くして移動する。


「くっ!離れろ、化け物が!!」


袴田のその声にまぎれさせて、ドアを開ける事ができた。


教室から飛び出した私達は、工業棟の北側に向かって走る。










「あ~かい ふ~くをくださいな~」













第三実習室の中から、あの歌が聞こえ始めた。


できるだけ遠くに……袴田や二見から離れなければ、次に殺されるのは私達かもしれないから。












「し~ろい ふ~くもあかくする~」












避難口誘導灯に導かれて走り続ける私と翔太。


徐々に「赤い人」の歌が遠ざかっていく。


「結子!どきやがれ!」