この第三実習室のドアは二つ。


私が床に血を落としながら入室したのは、トイレ側のドアから。


そこから一番遠い机の陰に身を潜めて、絶体絶命の危機に心臓の鼓動が早くなっているのが分かった。


机の下には、木製の角椅子というのだろうか?


それが6つ納まっていて、入り口からは私達を確認する事はできない。


「いいか、美雪。いつでも逃げられるようにしておくんだ」


「分かってるけど……ここからじゃ、何も見えないよ……」


と、言い終わるかどうかというタイミングで、ドアが勢い良く開けられた。


誰が入って来たのか……部屋の中が、携帯電話で照らされたような光で照らされる。


携帯電話を使っているという事は、少なくとも「赤い人」や死体ではないという事は分かるけど……。


「……んだよ、血はここで終わりか?誰もいねぇのかよ!!どいつもこいつも、俺をバカにしやがって!!」


その声は……袴田だった。


途切れた血痕を見て、キレたのだろう……突然、ガシャンという音と共に、キャビネットの上に置かれた、棚のガラスが床に飛び散ったのだ。


きっと何か、棒のような物を振り回しているに違いない。