「これで、しばらくは大丈夫だろ。しかし困ったな……今から床の血を拭きに戻るわけにもいかないし。早くこの部屋を調べるか」


「うん……ごめんね」


床の血はこの部屋で消えている。


もしも、この血の跡を追われても、ここから先はどこに行ったか分からないはず。


……だといいんだけど。


いつもいつも私の期待を裏切ってくれるこの空間では、考えるだけ無駄な気がする。


カラダを探すのもそう。


直感で動いた方が、カラダにたどり着けているように思えるのだ。


「ありそうで……ないな」


キャビネットを調べ終わった翔太が、ため息混じりに呟く。


「ないよね……じゃあ、次の部屋に行こうか」


ない事を嘆いていても仕方がない。


そう言い、部屋を出ようとドアを少し開けた時、その音は聞こえた。













コツ……。




コツ……。













二見の足音……そして、それとは違ったガタンという音が。


ドアを少し開けたけれど、このまま出るべきかどうか、私は迷っていた。