タンクの中も確認するけれど、ここにもない。


「はぁ……やっぱり見つからないよね。最初が運が良すぎたのかな?」


そう呟き、諦めてトイレから出ようとした時だった。









コツ……。





コツ……。










まだ近くではない……だけど、確実に近付いているその音に、私は足を止めた。








コツ……。




コツ……。












この音は、昨夜も聞いた音と似ている。


二見の靴の音だ。


トイレの入り口で、廊下からは見えないように身を隠して私は考えていた。


八代先生が言っていた、死体が動くのに必要なのは脚と目……その中に、耳はなかった。


となると、見えてはいるけど聞こえていないという事かもしれない。


それに、「赤い人」と違って、その姿を見ても振り返る事はできる。