「この中にあるかな……」


この量の電線クズを一本一本避けていては時間がかかる。


それらをかき分けようと、電線クズの山に手を入れた時。


「痛っ!」


手に痛みを感じ、慌てて引き抜くと、さらに引っかかれたような痛み。


「おいおい!電線の切り口はするどいから、不用意に手を突っ込むなよ!」


言うのが遅いよ……。


携帯電話の明かりで手の甲を照らして見ると、血がしたたり落ちるくらいの刺し傷と切り傷。


「ハンカチもないし……まあ、『昨日』に戻れば元に戻ってるから良いけどさ」


そんな事を言ってみるけれど、手の甲がジンジンと痛む。


「結構切ったな……止血は、直接圧迫するのが良いけど……」


「別に良いって。毎日殺される事を思ったら、たいした事じゃないし」


そう言いつつも、ポタポタと指先から床に落ちる血は、いつも見ている血とは違った印象を受けた。


この危険な電線クズの山をかき分ける事はやめて、翔太の指示で箱を倒す事にした。


ドンッという音と共に倒された箱から、電線クズが床に散乱する。