そう怒鳴り付けるなり、伊勢はまだ起き上がっていない袴田に向かって駆け出した。


そして、軽く飛び上がって、その顔にするどい蹴りを放つ。


スピードの乗った蹴りは、袴田のあごに直撃し、後方に弾かれた。


だが、伊勢の怒りはそんなものでは治まりそうにない。


「テメェは……人を好きになった事はねぇのかよ!!二見はテメェの飾りか!?大切に思った事はねぇのかよ!」


そして、倒れた袴田にさらに蹴りを入れる伊勢。


なんだか、その言葉の対象が二見ではなく、明日香に思えて……また胸が苦しくなる。


「結子、ごめん……ちゃんと話を聞いてあげれば良かった……」


自分の行いに対する後悔からか、涙を流して謝る留美子。


「留美子、謝るなら昼間に謝ろう。今そんな事を言っても、二見には聞こえていない……」


そんな留美子の肩に手を置き、頭をなでる翔太。


伊勢も翔太も……女子には優しい。


それは当たり前の事なのかもしれないけれど、そうじゃない奴がいる。


本当に殺してしまうんじゃないかと思うくらい、袴田に攻撃を加え続ける伊勢。