伊勢の着メロ、目立ちすぎるよ!


逃げる必要がないのに、逃げちゃったじゃない。


生徒玄関に着いた私は、下足箱の前で携帯電話をいじりながら、靴を履き替えている柊の姿を見た。


そう言えば、昼休みに伊勢が言ってた「あいつらも一緒」だって。


柊は、友達が多くてクラスの中でも目立つ存在。


私とは真逆で、話なんか絶対に合わない人だと思う。


でも、もしも伊勢が言うように一緒に「カラダ探し」をするのなら……。


「あ、あの……柊さん、ちょっと……いい?」


思い切って話しかけたその声も震えている。


なんでこんなに緊張してるんだろ。


「ん? ああ、美雪じゃん。何か用?」


手にしていた携帯電話をポケットに入れて、私に視線を向ける。


「あのさ、柊さん……明日香に『カラダ探し』を頼まれなかった? 私、頼まれたんだけど……」


「あー、私も頼まれたけど。え、何? もしかして、あんな噂話を本気にしてんの?」


話した事もないのに、私の事を美雪と呼び捨てにして、普通に話をしている……。


そんな柊を、私はうらやましくも感じていた。


「まあ、心配する事なんてないって。どうせ明日香のイタズラなんだからさ。あ、あと、柊ってやめてくんない? 皆、留美子って呼んでるからさ。それでいいよ」


苦手な人だと思ってたのに……話した事がないのは、私が勝手に壁を作っていたからかもしれないと、この時思った。