「袴田武司って奴が、俺達がカラダを探すのを邪魔すんだよ。『昨日』は翔太が殺された。先生の時はどうやって切り抜けたのか、教えてほしいんだよ」


固まったままの留美子を放置して話は進む。


先生の部屋か、この先の事か、どちらが大事かは考えるまでもなかった。


不気味な部屋に、呆気に取られていた留美子もソファに座り、先生の話を聞いていた。


注意すべきは袴田だけ。それならば、ひとりになる時間を作らない事、今日のように常に一緒にいる事は先生も同じ意見だった。


でも、二見がどんな行動に出るかが予測できない。


袴田の所に戻るのか、それとも留美子が謝りさえすれば、こちら側に付くのか。


「こんな事を生徒に言うのは、僕の立場上不謹慎かもしれないけど……護身用に武器は持ち歩いた方が良いかな?包丁なら、家にもあるだろう?」


確かに、こんな事は生徒に言うような事じゃない。


むしろ、本来なら止めるべき立場の人間なのだ。


「殺されそうになったら殺せ……かぁ。私は無理だわ」


背もたれに身体を預け、諦めたように留美子は天井を見上げる。


留美子だけじゃない、そんなの私だって無理だ。