もしも、袴田が校門で待ちかまえていた時に、姿を見られないようにするためだという。


「僕が『カラダ探し』をしていた時は、校門の前で殺された事もあったからね。用心はした方が良いだろう?」


車を走らせ、ルームミラーで私達を見ながら、そうして気遣ってくれる八代先生。


「えーっ!でもさ、校門の前なんて目立つ所、警察に捕まっちゃうじゃん!」


「まあ、そうだね。でも、例え警察の取調室にいても、拘置所にいても、0時になれば学校に呼び寄せられるんだよ?そして『昨日』に戻れば、すべてがなかった事になる……社会的にはね」


どんな犯罪を犯したとしても、罪には問われない……。


そんな日が続くのなら、悪知恵の働く奴にとっては、この状況を続けたいと思うだろう。


袴田が、その考えを持っているという事は今までの行動から分かる。













「さあ、着いたよ。ここが僕の家だ」


そう言った先生の言葉に、私は驚いた。


先生の家と私の家が、直線距離で200メートルも離れていない場所にあったのだから。


私の家の近くにある立派な近代日本家屋。


ここが八代先生の家だなんて思わなかった。