「そうだな、話くらいは聞くべきだったかな? これで俺達の敵に戻ったら、ますますやりにくくなるぞ」


「翔太までやめてよ……ブルーになるじゃん」


いつも騒がしい留美子の姿はそこにはない。


自分がやった事に対する後悔の念で、かなり落ち込んでいる。


そんな留美子に、伊勢が何かを言いかけた時だった。


「ごめんね……皆」


背後からかけられた声に、慌てて振り返る私達。


この声と、この言葉は……。


なんて、考えなくても分かる。


私が明日香の姿を目でとらえた時には、伊勢が明日香に駆け寄り、その体を抱き締めていたのだ。


「……私のカラダを探して」


伊勢の腕に抱かれて、涙を流しながらそう言った明日香。


「バカ野郎……この時間は、お前が消えた時間じゃねぇかよ!」


そんな伊勢の姿を見て、私の胸がまた苦しくなった。


明日香が「カラダ探し」を頼んだ後、気付いた時には目の前にいるのは伊勢だけ。


明日香は消えて、私の胸の苦しみも消えていた。


この時間に明日香が消えた……伊勢がそう言っていた時間には、私は掃除が終わった教室で窓の外を眺めていたな。