「わりぃ、ちょっと便所行ってくるわ」


顔の前で、軽く一度だけ手刀を切るようなしぐさを見せて、この場から立ち去ろうとする。


「ん?ああ、屋上ね。いってらっしゃい」


伊勢に手を向けて、シッシッと指だけを動かす留美子。


「くっ!!テ、テメェら、やっぱり見てたな!?」


もう……留美子も言わなくて良い事を言うんだから。


「怒ってないで早く行けば?明日香が頼みに来ちゃうよ?」


ニヤニヤと笑みを浮かべる留美子に何も反論できず、走って教室から出て行く伊勢。


恥ずかしいのか怒っているのかは分からないけれど、明日香がうらやましくて……私は少し胸が苦しかった。


「高広もウブだねぇ……見てて楽しいわ」


たまにこうして留美子は伊勢をいじってるけど……これが友達って事なのかな?


だったら、まだまだ私は努力が足りないと感じた。


と、そんな事を考えていた時……。










「お、おはよぉ……」










伊勢と入れ代わるように教室に入って来たのだろう。


二見が……私達に声をかけたのだ。


「ちょっと……結子、あんた何しに来たわけ?どうせ『昨日』も、武司に言われて私達の邪魔をしに来たんでしょ!?」